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担当 岩本 正


効率配車論

一. 当社は昭和29年に創業したが、以後時代的に当地方でのタクシー経営は極めて難しく、
各社は次々と倒産もしくは経営者交替などを繰返した。
当社も勿論その例外ではなく、私が37年末に代表取締役に就任した当時には、
表1の如くもはや無残な経営内容であった。

表1
自己資本比率 昭和39年 平成12年 自己資本比率 昭和52年 平成12年
当社 11.1% 73.7% 関連C社 -13.2% 81.4%

企業運営の資金調達も極めて困難な当時であったが、
当社はA銀行担当者の勧めにより当時極めて稀であったタクシー無線の導入という幸運に浴した。
当時我々地域2県でわずか3社が導入しているのみであった。
私は資金運用の適正を求めるべくその3社をたずね、その効用を問うたのだが、
いずれも「ただ良いから導入してみなさい」との返答のみで具体的にどのようなメリットがあるのか
の理解には達し得なかったのである。

しかしながらA銀行の好意にもとづきともかく当社も導入することにした。
当時、当社の保有車両数は10両であり、資金的事情もあり試みに5両に装置をしたのである。
私は導入当時その効用とより良い運用を求めるべく自身で操車をしてみたのである。
その結果、無線の効用は「車両の回転率の向上」に絶大たることがわかった。

それまでの営業は1輸送ごとに営業所へ帰庫して指示をうける営業方式であったのだが、
無線導入によりそれが不用となり、空車地点にて次の指示が受けられることからして
著しく回転率が向上し、結果莫大なる売上増大となったのである。
この点が無線導入効用の第一要点たる事がわかった。

次に理解し得たのは無線があれば空車時点で必要以上に営業所へ帰庫することは
一切不用であり、できる限り「ひろい客」の可能な地点での分散待機等が極めて
有効という考えであった。
利用者は100mすらも営業所へ足をはこぶのが億劫なのが自然な心理だとの理解
に立ってである。その意味からも市中のしかるべき地点に分散待機するが有効な
ことは論をまたず、その上実車率の向上は省エネをももたらしたのである。
以上の2点が結局無線導入の基本的メリットであることがわかった。

そこで当社は徹底的にそれらにもとづいた営業政策の追求と操車係の教育に終始したものである。
以後当社は今日に至るまで当地域における売上高トップの座を譲ったことはないつもりであり、
それについては以下の表2輸送実績・他社比較表を参照して頂ければご理解頂けるはずである。
以上の経緯をもとに今日では操車術の基本体系は下図のものとして運用している現状である。
     
つまりより売上高を増大せしめる操車術は効率的に全車両を配車あるいはそのための
配置をすることであり、このことは利用者のニーズを如何にとりこぼすことなく
キャッチするかということであり、結果、各車両の回転率の向上が可能となるのであって、
そのため当社は基地局の前に地域の地図をおき、各車両NOの「こま」を実車、
空車別にその都度配置することにして各車両の動態把握につとめたのである。
そのことは実車車両の方向性、やがての空車時刻の予知力の向上をもたらすこととなり、
実車中車両の次の利用可能性をも促しより各車両の回転率の向上をももたらす
こととなったのである。

勿論このような操車能力に至るには文字通り瞬時の全車両の動態把握をすることが
絶対条件であり、そのための教育が操車係(基地局)、乗務員(移動局)への重大作業であった。
そのことは効率配車を追求する限り際限のない課題であり、当社は現在でも年間8−10回の
操車会議及び3−4回の乗務員会議を開催し教育につとめている。

いずれにしても無線活用の営業態様は以上のような考えにもとづいて運営してきたものである。
結果は以下の表2の平成5年度までの数値を参考にされたい。
(昭和57年以前は輸送実績が作成されていなかったためデータ不可)

二. 平成6年8月当社はGPSを採用した。

だがこの成果は想定した効果を発揮しなかったのが実態であった。
(平成7年度の指数が高いのは同年6月15日に7.6%の料金改定があったためであり
政策的結果ではない)

その理由は当社の効率配車方式追求の教育がかなり高度化していたため、
あえてGPSを導入する必要もなかったということである。
しかしながら、わずかながら成績が向上したのはGPSが監視機能を有していたということである。
つまりGPSが出退社、休憩等の管理機能を備えていたことが
乗務員に完全厳格性を求めることとなり、それまでよりいずれにも早めの対応をするように
なったのである。
(実際に我々業界の時間ロスに対する管理の巧拙が重大たるはご承知の通りである。)
これらは他面にも貴重な利益をもたらした。

  1. とかく我々業界にありがちなルーズの不通用
    (いずれにせよGPS画面にうつしだされている自己認識)
  2. ごまかしは一切通用しないの意識がもたらす組織運営の利益
  3. 高度な機器理解利用者の合理性観念の高揚
    (ある地域事業者にみられる乗務員の順番主義尊重の安易性のためのAVM、
     GPSの本質不活用の不合理性の理解)

等々であるが、いずれも我々業界の後進性であり、かつ、なかなかメスのいれ難い
悪習慣の改善にこの3点などは極めて有効に作用したことは望外のプラスであり、
経営的には大収穫であったといえる。
やがてそのことはパソマップ導入時に如何に有効に機能したかによって証明されることであった。

三. 当社は平成10年4月ナンバーデイスプレー対応のパソマップを導入した。

これは電話のベルが鳴ると同時に瞬時にその位置を把握できるという我々電話営業に
画期的なものであり、利用者との通話時間(場所も名前も一切不要)は大幅に短縮され、
処理可能本数は格段にアップした。

それについては以下の表2の通り、導入以前の回数占有率は約21%であったのに対し
導入後2年目には24%に迫る勢いでありその効果は一目瞭然である。
保有台数は依然として14%強なのにである。

しかしながら、どの企業においても導入さえすればそのような効果が得られるものではない。
なぜならば、いくら瞬時にその場所が把握できても分散待機の政策がなければ
利用者を待たせることになり回転率を高めることはできず、ましてや虚偽の位置報告が
まかり通っているような企業、あるいは順番主義を優先するような企業においては何の意味もない。

つまりパソマップの最大の効用は瞬時に利用者を把握することのみならず
そのことにより瞬時に配車が可能になるということも必要であり効率配車の概念がない
企業においては所詮効力の発揮など望みうべくもない。

また、もうひとつこのパソマップは大きな効果をもたらした、というより
現在ももたらし続けているのは「顧客数の増加」である。
たとえば、当地に越してきたばかり、あるいは自分の電話番号を非通知にしている人も、
その番号を一旦こちらで入力すればもうその位置を説明する必要はないわけであり、
その利便性からも顧客の獲得に多大の成果をあげてきた。
ちなみに導入以後当社の顧客数は13万人程度の地域人口で3万件を突破し
現在も1日10件程度増え続けている。
表2
当社地域輸送実績他者比較 売上高占有率(%) 保有車両構成比(%)
昭和58年度 18.9 13.7
昭和63年度 19.1 13.7
平成5年度 18.3 14.2
GPS導入(平成6年8月)
平成7年度 19.2 14.6
平成8年度 19.0 14.6
平成9年度 18.9 14.6
PM・ND導入(平成10年4月)
平成10年度 20.4 14.6
平成11年度 22.1 14.7

四. いずれにしても当社におけるパソマップ効果は絶大なるものがあったことは
導入後の表2をみれば歴然としている。

しかしながらこれらの効果は、あくまでも当社が30数年間追求し続けている
効率配車の精神を基礎とした営業政策と相乗してのものである。
そのことは平成11年度と昭和38年度の表1を比較していただければ
その精神がご理解いただけるものと思う。

ちなみに昭和52年当社に加わった関連C社の表1及び表3をごらんになれば
如何に当社の営業政策(効率配車論)が有効であったかが証明されているものと思う。
これには今までの当社が研究した手法をそのまま活用しての会社再建であったからである。
表3
関連C社地域輸送実績他者比較 売上高占有率(%) 保有車両構成比(%)
平成11年度 42 31

以上タクシー営業の当社の手法について述べた。

だが同条件地域における実働1日1車当1万円強、
即ち30数%もの売上高の差異が余りにも大きいことからして今までに述べた方法論のみで
これほどの有益性が確保できるとは誰しもお考えではない筈である。

我が社はそれらの営業政策以外にも財務管理の厳格さ、そして売上高の70数%をも占める
労務管理の重大性の認識(当社は私が就任して5年目頃に33日のストライキを受け、
又C社買収の際にも約1ヶ月のストライキを受けた経験を持つ。今にして思えば
これらの労務処理の適切性が今日の他社との差異の本質となっているといってもよい)、
そしてその他の管理諸点にも色々な工夫があった。

例えば管理職のための管理俯瞰図、乗務員用の出勤から退社までの一切のあり方を網羅した
服務規律等々書き上げればきりがない程に政策そしてその教育を繰り返してきた今日である。

まだまだ今までの努力で今後容易に対応可能とは思ってはいない。
今までのそれは一通過点であり、規制緩和の今後はもっと困難な問題に立ち向かわなければ
と思う今日この頃である。

尚、当社は今般約6年間利用したシステム総合開発のGPSスカイワンを廃棄した。
そして日立電子の製品「日立GPS・AVMシステムU」を新規に導入した。
これはスカイワンの当社の経験を多分に採用して頂いたものであり、
特に勤務時間に関するソフト開発は画期的なものである。

その上給与計算にまでそのデータ利用が可能という我々業界における夢の実現ともいうべき
合理化策の期待を可能としたものであり、今後には営業データ分析から給与計算までの
IT革命を果たすことが可能となった日立電子の「日立GPS・AVMシステムU」に、
なお一層の経営効率の追求を期待しているところである。